「こもま(小も間)」。それを「こ(小)」と表現してもそこにまだ「ま(間:空域・「こ(小)」と表現されたそれのない域)」がある、「こ(小)」と表現してもまだ間(ま)があるほどの規模、の意。つまり、その空域がないほど「こ(小)」、完全なる「こ(小)」と表現できないほど「こ(小)」だ、ということ。どういうことかというと、たとえば直系三センチの円を「こ(小)」と表現した場合、その中にある直径一センチの円にはその周囲に間(ま)がある。直系一センチの円は直径三センチの円を「こ(小)」と表現しても間(ま)がある。それが、それを「こ(小)」と表現してもそこにまだ「ま(間)」がある→「こもま(小も間)→こま」。これは、「こ(小)」と表現されたそれに視点をおけば、非常に小さい、という意味になり、「こ(小)」といってもまだ間がある、そんな間(ま:空域)などない、という意味では、全体が濃密に充実していることを意味する。これにより、二度重ねて動態の持続が表現され「こまごま」、「~やか」や「~らか」にある「か」がそのままついて「こまか」、その「はるか(遥か)→はるけし」のような変化で形容詞「こまけし」(ク活用)、「くはし(詳し)」が「こま」で強調され「こまくはし(こま詳し)→こまかし」(シク活用「こまかし」)、「こまか」が語幹になり形容詞「こまかし」(ク活用「こまかし」)、「~やか」がついて「こまやか」、「こま」((特に土壌の)濃密な充実感・肥沃感)の持続的発生感のある動詞「こまだち(濃だち)」、といった表現がある。「こまもの(小間物)」、「こまぎれ(細切れ)」、「こまづかひ(小間使ひ)」の「こま」は物(もの)や事(こと)として、小さな、ちょっとした些細な、の意。

「こまかなるはゐ(灰)のめはな(目鼻)にもいりて」(『源氏物語』)。

「女院よりさまざまにこまかにおしはかりとぶらひ聞えさせ給へり」(『源氏物語』)。

「かぐや姫をえ戦ひ止めずなりぬることこまごまと奏す」(『竹取物語』:かぐや姫をひきとめることを(月の世界へ帰ってしまうことを阻止することを)なしえなかったことを…)。

「髪、いろに、こまごまとうるはしう」(『枕草子』)。

「くろぼう(薫物(たきもの)の一種)をたきものの炭のやうにして………こまやかにうつくしげに入れて」(『宇津保物語』)。

「鈍色(にびいろ)のこまやかなるが…」(『源氏物語』:濃密、の意)。

「猶こまかしく尋ねんとすれば」(「浮世草子」:シク活用)。

「傍(かたはら)に石柱あり。……質(すがた)堅く密(きびし)く理(あやあり 別訓 こまけし)」(『大唐西域記』:ク活用)。

「こまかい話はまぁいいとして」(ク活用)。

「其の地悉(ことごと)く皆(みな)沃(うる)ひ肥(こまやか)に濃(こまたち)たること余の処より過ぎてあらしめむ」(『金光明最勝王経』:濃密・充実→肥沃、の意)。