◎「こま(独楽)」
「コまつくり(「小」間作り)」の下略。「独楽 ……和名古末都玖利 有孔者也」(『和名類聚鈔』)。「コまつくり(「小」間作り)」とは、「小(コ)」の字の間(ま:空域)、すなわち中央の縦線と左右の斜め線の間(あひだ)、を作った(形成した)もの、の意。中央の縦線にあたる部分に回転力を加えると全体がある程度の時間回転し続け全体が自立し続ける。主に子供の遊具。上記『和名類聚鈔』に「有孔者也」(穴のあるもの)とありますが、芯を入れる孔(あな)があり、ここに芯をさし、立たせ、回転させ芯を抜いたのでしょうか(それとも、内部が空洞になっている唸(うな)り独楽か?)。「独楽」は和製漢語(ただし、古い時代の漢語だという人もいる(資料的根拠はありませんが(※下記)))。
※ 『和名類聚鈔』にそう書かれるわけですから、900年代前半に「こま」を「独楽」と書いたことは確かなわけですが、なぜそう書いたかに関しては、この「楽」は「舞楽」のような意味で、「こま」はクルクルと揺れつつ回り独(ひと)りでそれをやっているようだから、ということなのではないでしょうか。漢語だという説は、現在、中国語で独楽(こま)を「陀螺(トゥオルォ)」と言うのはそれ以前からの「独楽(ドオラー)」の音を写したのだと言います。しかしなぜ「独楽(ドオラー)」が「陀螺(トゥオルォ)」になるのかよくわからない。
◎「こま(齣)」
「こま(小間)」。「こ(小)」は全体の中の一部の意。たとえば映画の一続きたる一部。意味発展的にフィルムにおける一つの映写画像。
「漫画の一こま」。「生活の一こま」。
◎「こまいぬ(狛犬)」
「コマいぬ(去魔犬)」。「コ」は「去」の音(オン)。「去魔」は、魔を去る、取り除く、の意。魔除(よ)けです。神社の門口その他におかれる獣形造形物(神社にだけあるというものではなく、寺にもあり、その他の場所に置かれることもある。つまり、神社系文化や仏教系文化に由来するものではなく、基本は俗信)。「いぬ(犬)」と言われますがその造形のほとんどは獅子です。語源としては「高麗(こま)」から伝来したからと言われることが相当に一般的ですが、同音という以外に根拠はありません。
・馬を意味する「こま(駒)」という語もありますが、これは原意は「こうま・こむま(子馬)」。この語が、とくに、活き活きとした躍動感をもって馬を表現する場合に用いられる。弦楽器(たとえば三味線)の弦と胴の間にはさみ入れ、弦を持ち上げ、弦が自由に振動できるようにするものも「こま(駒)」と言いますが、これは「こめは(込め端)」か。何かと何かの間に込める断片状のもの。将棋の「こま(駒)」は馬の比喩。