◎「ごと(毎)」

「がこと(~が異)」。「が」は所属を表現する助詞。「がこと(~が異)→ごと(毎)」は、何かが異(こと)になる状態で、の意。「本(もと)ごとに花は咲けども…」(『日本書紀』歌謡114:本(もと)が異(こと)に花が咲く)。

「吾妹子(わぎもこ)が植ゑし梅の木見るごとに心(こころ)むせつつ涙し流る」(万453:見るたびに何かがことなる悲しさが溢れ際限のない状態で)。

「日毎(ひごと)寒さがつのります」(日が異(こと)・その日はその前の日とは異なって、寒さがつのる)。

 

◎「ごと」

「こちと」。「こち」は「あちら」「こちら」のそれであり、「と」は思念的に確認する助詞。「こちと→ごと」は、何かが、向こうに(他に)ではなく、こちらに属していることを表現する。

「リンゴを皮ごと食べる」。

 

◎「ごとく(五徳)」

これは三本や四本の脚のついた丸や四角の金属製の枠であり、これを炭火などに覆うように設置し、上に薬缶(やかん)や鍋などを置き火力を利用する。中国の陰陽五行説における万物組成の五元素「木・火・土・金・水」を「五徳(ゴトク)」や「五行(ゴギャウ)」と言いますが、炭火を覆うように設置しそこに薬缶を置いたりするこれは、それにより木(炭)、火、土(灰や土)、金(これは金属で出来ている)、水(薬缶や鍋の中には水がある)の「五徳(ごとく)」が揃うもの、の意。ちなみに、「徳(トク)」は、媒介のないこと、得ていること、備わっていること、を意味する。

 

ちなみに、中国の陰陽五行説では万物組成の五要素が言われ、宇宙の全ては五つの元素「木・火・土・金・水」から成り立つとされますが、なぜ「木(き・植物) ・火(ひ) ・土(つち) ・金(かね) ・水(みづ)」なのかというと、基本は、人がそれで生活しているからです。ここに動物がないのは自分が動物だから。これは中国の「哲学」とも言われますが、基本は徹底的に俗で即物的なものです。「哲学」という語から一般に思われるような抽象的思考などはない。陰陽の廻(めぐ)りは世界は暗い夜と明るい昼がめぐって動き進んでいくということです。たしかにそうです。