◎「こぞり(挙り)」(動詞)
「ことそろひ(事揃ひ)」。「とそ」が「ぞ」になっている。多数主体の全体の「事(こと)」が揃ふ、あるいは、ある対象の、一部ではなく、全体が事が揃ふ、こと。
「上皇を始め進(マヰ)らせて、あらゆる人々、音に聞ゆる爲朝見んとて挙(コゾ)り給ふ」(『保元物語』)。
「国こぞりて此の仏を崇め奉る」(『今昔物語』)。
「揃(そろ)へる」という意味の他動表現も稀にある→「四百余州(しひゃくよしゅう)を挙(こぞ)る 十万余騎の敵」(「軍歌」(1892年))。
「国を挙(こぞ)て僧徒皆来て会集す」(『大唐西域記』:これは他動表現のようであるが、「を」は状態を表現し、自動表現)。
◎「ごたごた」
「ごとやごとや」。「ごと」は「皮ごと食べる」「丸ごと全部」などと言う場合のそれ→「ごと」の項。「や」は詠嘆。すべてが、なにもかもを、自分に取り込もうとし、さまざまなものごとが、あるいは、或るものごとが、それとしての区別なく、秩序なく、雑多になっていることを表現する。
「しまだほどけて乱髪、こまくら、かうがいごたごたに、櫛のはみだすごとくなり」(「浄瑠璃」)。
人間関係たる事象がそうした状態であれば、処理が面倒なもめ事を意味する。
これから派生した「ごた煮(に)→ごった煮」といった表現もあり、音(オン)は「ごちゃごちゃ」にもなる。
◎「こたつ(炬燵)」
「コ立てひ(庫立て火)」。E音とI音の連音がU音化し「てひ」が「つ」になっている。庫(くら)のような閉鎖的小空間に立てた(発生させた)火、それがある装置、の意。机のような櫓(やぐら)状のものの中に火がある暖房具。床に置くものと床自体に掘りのあるものがある。「こたつ(炬燵)」がいつできたかは明瞭ではありませんが、十五世紀頃でしょうか。「炬燵」は当て字。「燵」は日本で作られた字(たぶん、「こたつ」を表現するために作られた)。