「ゴザあり(御座有り)」の「あ」の無音化。「ゴザなし(御座無し)」という表現もある。権威者・貴人(何らかの意味で尊い人)の居る特定的場所、さらには、権威者・貴人がそこに着くことそこに居ること、が「ゴザ(御座)」。それが認められることが「ゴザあり(御座有り)」。認められないことが「ゴザなし(御座無し)」。「法皇は…錦帳ちかく御座あ(り)て」(『平家物語』)。その「ゴザあり(御座有り)」が、ものごとが有ることを認めることを一般的に表現するようになると、状況一般、さらにはものごと一般への尊重感の表現となり、ものごとの丁寧な表現になる。「罷出(まかりいで)たる者は津の国の御(お)百姓で御ざる」(「能狂言」の始まりの台詞)。これに「~ます」が加わって「ござります・ございます」にもなる。「ござあり」という表現は鎌倉時代に始まり室町時代に広まった。

「ゴザ(御座)」の「ゴ」は「御」の呉音ですが、「ギョシャ(御者)」や「トウギョ(統御)」という言葉があるように、「御(ゴ・ギョ)」は何かを(たとえば馬を)コントロールすることを意味し(※下記)、世の中をコントロールする人が居る座が「御座」ですが、こうした用い方の「御」という言葉の影響により、さまざまな言葉に「御(ゴ)」をつけ権威あるもの、尊ぶべきものであることを、後世ではほとんど慣用的に、表現する、尊敬表現というよりも日常的な丁寧な言葉遣い、が行われるようになる(これは基本的には中国で皇帝に関する様々な語の語頭に「御」が添えられたことの影響でしょう。「御用」という言葉なども、日本では江戸時代に下級役人が盗人などを取り押さえる際に言ったりしますが、中国では皇帝が使用するものを「御用」と言ったりした)。

「御免(ゴメン)」、「御飯(ゴハン)」、「御意見(ゴイケン)」、「御苦労(ゴクロウ)さん」、「御案内(ゴアンナイ)」……。

※ 『説文』には「御」の意は「使馬也」とある。

 

(参考として「お(御)」)

◎「お(御)」

「おほみ(大御)」、たとえば「おほみこと(大御言)」、が永い歳月と社会遍歴を経て「お」の一音になったもの。そうなるまでの過程には「おほむ」や「おん」などがある(平安時代に、限定的な語についた「おほ(大)」が「お」になったりもしている。「おほもの(大膳)」→「おもの(大膳)」)。

「お水」、「お米」、「おタク(御宅)」、「おでかけ」その他、尊重感の表現としてこの言葉はさまざまな言葉に付され、さらには、ただ習慣化し、とりわけ尊重緩を感じているわけでもないが、粗雑な言葉遣いをしている印象を受けることを避けるためにふされていたりもする。

『お元気ですか?』『元気か』。