◎「こころつごき」(動詞)
「こころつきうごき(心突き動き)」。「き」は、「つくごき」のような音を経つつ、消音化した。心臓が突き動くような情況であることを表現する。
「ほととぎす………聞くごとに心つごきて(許己呂都呉枳弖)…」(万4089)。
この語はほとんど用例はない。
◎「こころど」
「こころど(心ど)」。この「と」は「とごころ(利心)」などど言う場合のそれですが、原意は「こころづよ(心強)」です。清音にも濁音にもなる→「と(利・鋭)」の項。「こころど(心ど)」は、心の強さ、しっかりした心。
「君に恋ふるにこころどもなし」(万3972)。この語は「こころどもなし(こころども無し)」という表現が非常に多い。そのほかは「こころどもなぐる(和ぐる)ひ(日)もなし」(万4173)や「こころどのいけるともなき(生るとも無き)」(万2525)。
表記は、音(オン)で書くほかは、「情利、情度、情神、心神」といった書き方をし、「情神」や「心神」の場合、たましひ、と読むか、とも言われますが、古代では魂(たましひ)がなければ死んでおり、死んだ状態が自覚されることはない。
◎「こころなしか」
「こころなしか(心成しか)」。最後の「か」は考える語感の「か」。心によってなされたのか、の意。ただ心によってなされ現実ではない、という意味ではありません。自分の心がなぜそうなるのか、人はすべて明瞭にわかっているわけではなく、「こころなしかそう思われる」は、なぜそう思うのか自分でもわからないがそう思われる、ということ。