◎「くるべき(転べき)」(動詞)
糸を巻き取る道具たる「くるべき(反転)」の動詞化。名詞「くるべき(反転)」がそのまま動詞化している。
その道具たる「くるべき(反転)」は 「(糸を)くるうめき(くる埋め着):「くる」は回転を表現する擬態。くるくると回りつつ(糸で)埋め尽くされるようにそれを着ていく(それが装着していく)もの」。これは枠(わく)が回転しそこに糸が巻かれていく。その動詞化たる「くるべき(転べき)」は、その「くるべき」の動き、すなわち回転することを意味する(平面上を一点から等距離を維持しつつ同じ方向へ自由運動する、ということ)。
「くるべく事、独楽(こまつぶり)を回すが如し」(『今昔物語』)。
※糸を巻き取る道具たる名詞「くるべき(反転)」の用例
「吾妹子に 恋ひて乱れば くるべきに 懸けて寄せむと 吾(わが)恋ひそめし:吾妹兒爾 戀而乱在 久流部寸二 懸而縁與 余戀始」(万642:この歌はこれが一般の読み方のようですが、原文二句の末尾は「者」に書き変えられたりもしていますが原文は「在」であり、全体の読みは「吾妹子に恋ひて乱るるくるべきに懸けて撚(よ)らむと吾(わが)恋ひそめし」でしょう。「くるべき(反転」と「来(く)るべき」がかかり、「来るべきにかけて」は、(相手の女性が)来るべき(運命)であることに賭(か)けて、(相手の女性が)必ず(私のところへ)来てくれるはずだという願いにかけて、がかかり、「(糸を)撚(よ)り」と「(あなたに)寄(よ)り」がかかり(原文 「縁(より):「縁」は「より」と読む。たとえば万50」 に「撚(よ)り」と「寄(よ)り」がかかり)、そんな思いで私はあなたに恋ひ初(そ)めた、ということでしょう)。
「反轉 ……久流閉枳」(『和名類聚鈔』:この語は『和名類聚鈔』の調度部中・蠶(蚕)絲具の部分にある。具体的には、台に柱になる棒を立て、そこに、繭からひいた糸を巻いていく回転し枠(わく)となる部品をつけたもの)。
◎「くるま(車)」
「くるみわ(くる廻輪)」。「くる」は回転を表現する擬態。「み(廻)」は、廻(めぐ)る、ということ。くるくると廻(めぐ)る輪、の意。つまり、中心を軸として回転するよう工夫された輪(わ)です。部品として「くるま(車)」を装着し人が乗って移動したり物を乗せて移動させたりする装置全体も「くるま(車)」という。
「恋草(こひぐさ)を力車(ちからぐるま)に七車(ななくるま)積みて恋ふらく我が心から」(万694:「力車(ちからぐるま)」は、ようするに、荷車でしょう。それほど思い荷を引きつつ私は毎日生活しています、それは私の心が私にそうさせている、ということでしょうけれど、「恋草(こひぐさ)」の「くさ」には「種(くさ)」がかかり、あなたには恋が生まれる基因・種(たね)がそれほどにあるということか)。
「はかなかりし所の車あらそひに…」(『源氏物語』:これは車の駐(と)め場所を奪い合うように(特に従者たちが)争うこと。この車は牛にひかせる牛車)。
「車駕 ……和名久留萬」(『和名類聚鈔』:『和名類聚鈔』では車輪は「わ(輪)」といっている→「輪 ……和 車脚所以転進也」)。
「かざぐるま(風車)」。