◎「くびり(縊り)」(動詞)

「くびれ(縊れ)」(自動・下記)の他動表現。この自動・他動の関係は「きれ(切れ)」(自動)・「きり(切り)」(他動)のようなもの。「くびり(縊り)」は、原意的には、死体となった様子にする、ということですが、事実上の意味としては、首を締めたり締め殺したり絞首刑にしたりすること(→「くびれ(縊れ)」の項)。さらには、一般的に、何かに、これの一部を締めるような力を加えること。

「五に死。かうへ(頭)をはぬるは重し。頸をゆう(結ふ)をはくひると云。絰の字也。是は軽し」(『壒嚢(アイナウ)鈔』:これは絞首刑を言ったもの。「絰」の字には(原書に手書きで)「ケツ」の読み仮名がふってある。この字の音(オン)は「テツ」だと思うのですが…。中国の書にはこの字の音(オン)は「徒結切」とある。意味は『説文』に「喪首戴也」。あるいはこれは「決」の字音ということか。『類聚名義抄』の「決」の読みに「クヒル」がある)。

「手拭にて咽(のんど)を縊(くび)られ…」(「人情本」:手拭で首をしめられた)。

「香炉取りくびりて…」(『宇治拾遺物語』:香炉を手に握り取った)。

◎「くびれ(縊れ)」(動詞)

「けいむみいれ(気忌む見入れ)」。「み(見)」を「いれる(入れる)」とは、そういう見た目になること、そういう様子になること。「けいむみ(気忌む見)」、すなわち、その気(け)を忌む見た目・様子、とは、死体となった様子であり、そういう様子になる、とは、自殺することを意味する。これは事実として首を吊ることが多かったのであろうし、この語は「くびれ」になり、「首(くび)」を思わせ、「くびれ」はくびを吊ること、くくること、縊死することを意味するようになる。「いれ(入れ)」は他動表現ですが、この表現では、そういう状態になった、という意味の、客観的主体の自動表現になる。

「是(ここ)に大友皇子、走(に)げて入らむ所無し、乃(すなは)ち還(かへ)りて山前(やまさき)に隠れて自ら縊(くひれ)ぬ」(『日本書紀』天武天皇元年七月:これは、原意的には、気(け)忌(い)む(死んだ)様子になった、ということであり、死に関し間接的な表現をした、ある程度の尊敬表現でしょう)。

 

◎「くびれ(括れ)」(動詞)

「くびいれ (首入れ)」。首の状態を入れている、ということであり、「首(くび)」の状態・情況が現れていること、首の状態・情況であること。物なら立体の凹部がその立体を一周巡ったような状態になっている。「(瓶(ビン)の)中がくびれ」(中央部が細めになり)。