◎「くねくね」
「うねうね」(その項参照・下記※に再記)と回転を表現する擬態「くるくる」が融合した擬態。「くるうねくるうね」。R音は消えた。回るようなジグザグとでもいうような運動を表現する。「くねくねと曲がった道」。「くねくねし」というシク活用形容詞もある。
「ことにふれて、やすからずくねくねしきこと出で来などして、おのづから御仲も 隔たるべかめり」(『源氏物語』:心おだやかではない、複雑に曲がりゆがんだような出来事、ということでしょう)。
◎「くねり」(動詞)
「くねくね」(その項参照)の「くね」の動詞化。回りうねるような動態になること。
※(再記)
◎「うね」
「えいにえ(え去にえ)」。「えい」が「う」に、「にえ」が「ね」になっている。語頭と語尾の「え」は驚きの発声。「えいにえ(え去にえ)→うね」は、現れ驚き去りまた現れ驚くということ。驚き、去り行き、驚き、去り行き…、そんな経過を繰り返し経る。そうしたこと・ものが「うね」。畑の「うね(畝)」もそうした形状であることによる(この場合平面的に、そして上下に、「うね」がある)。「うねうね」という擬態表現もある。「うねて」(て、は助動詞)といった動詞表現があっても不自然ではないが、ないようです。「うねり」という動詞表現はある。
◎「くは(桑)」
「くひあ(食ひ『あ…』)」。「ひ」は「あ」に発散するように消えた。「あ…」は、驚くように感づく発声。食(く)ふと(つまり、噛み、それを砕くと)、誰もがその食った人に対し「あ…」と声を発するもの、の意。なぜ発声するのかというと、この植物の実を食ふと口が真っ赤になるからです。樹木性の植物の一種の名。葉が蚕の餌になり、この語の語源は蚕や養蚕に関連づけて考えられることが非常に多いです。しかし養蚕がはじまる前から「くは(桑)」はあります。
「足乳根乃母之其業桑尚願者衣尓着常云物乎(たらちねの ははのそのなり くはすらに ねがへばきぬに きるといふものを)」 (万1357:お母さんが生業(なりはひ)として育てている桑(くは)だって願えば絹(きぬ)になって着るのに…。ようするに、お母さんが育てている桑(くは:来(く)は?((彼が)来ることは?))だって衣(きぬ:来(き)ぬ(彼は来た))になるのに…(彼が来たっていいじゃないの)。この歌は、簡単そうなのですが、さまざまな読み方がなされ、意味が正確に把握されていない歌です(ようするに、桑(くは)・衣(きぬ)にこめられた意味が気づかれていない))。
「桑 …字亦作桒 和名久波 蚕所食也」(『和名類聚鈔』)。
◎「くは(鍬)」
「くゑゐは(蹴ゑ居刃)」。「くゑゐ」が「けい」のような音を経つつ「く」になっている。「くゑゐは(蹴ゑ居刃)→くは」は、蹴(け)っているような刃(のもの)、の意。足先で人が何かを蹴っているような形状なのです。これで土表面を掘り起こすような作業をしつつ土を返し和える。農具の一種。古くは刃の部分も木製。「すき(鋤)」と「くは(鍬)」は用途は似ています。
「つぎねふ山背女(やましろめ)の木鍬(こくは:許玖波)持ち打ちし大根(おほね)…」(『日本書紀』歌謡58)。
「鍫 ……和名久波……大鋤也」(『和名類聚鈔』)。「鋤 ……和名須岐……挿地起土也」(『和名類聚鈔』)。