◎「くちばし(嘴)」
「くちはし(口挟し)」。口でもあり挟むものでもあるような印象のもの、の意。「はし(挟し)」は想定される動詞。→「はさみ(挟み)」の項参照。鳥類の口部にある,顎(あご)の骨が突き出た角質部分。
「觜(シ) 説文云觜 和名久知波之(くちはし) 鳥喙也 喙 和名久知佐木良(くちさきら)……鳥口也 四声字苑云啄 訓都以波無(ついはむ)…鳥口取食也」(『和名類聚鈔』:「久知佐木良(くちさきら)」は「くちさきいら(口先苛)」か。口先の尖り出たもの。唇(くちびる)を意味する「くちさきら」という語もある(下記))。
◎「くちびる(唇)」
「くちひれゐ(口領布居)」。口にある「ひれ(領布)」のようなもの、「ひれ(領布)」の印象のあるもの、の意。「ひれ(領布)」とは、ようするに、ひらひらした印象のもの、ということであり、口の周囲の、そのような印象で動く部分、ということです。「くちさきら」とも言う。
「唇吻 説文云唇吻 上音旬久知比留(くちひる) 下音粉久知佐岐良(くちさきら)」(『和名類聚鈔』:この「ら」は情況を表現し、ある情況にあるもの、ということで、「くちさきら(口先ら)」は、口の先端あたりのもの、ということでしょう)。
「吻 …謂唇両角頭辺也 口左岐良(くちさきら)」(『新訳華厳経音義私記』:『説文』には「吻」は「口邊也」とされ、「唇」は「驚也」とされる。ようするに「唇(シン)」は口で揺れる(振動する)ところ、という意味らしい。「吻(フン)」の右側に書かれている「勿(漢音、ブツ、呉音、モチ)」は『説文』に「雜帛(ザツハク)」(「帛」は絹(きぬ))と書かれるような字なのですが、その意味を離れその音(オン)でいろいろなことを表す字になっています(たとえば、物))。