◎「くず(葛)」
「きうず(木髻華)」。人間の髻華(うず)ではなく、木の髻華(うず)、の意。「うず(髻華)」は下記※。この植物がその特性により木にからみ木が髻華(うず)を飾ったかのようになることによる名。植物の一種の名。根から製した葛粉(くずこ)はさまざまな用途で食用にされます。干した根は葛根(カッコン)と言い薬としても使用される。植物学的には豆科の植物。秋の七草の一であり、夏の終わり、秋の初めころに赤紫色の総状の花が咲く。ちなみに、文部省仮名遣いで「くず」と書く不要残物の仮名遣いは「くづ(屑)」。
「葛 ………葛脰…和名久須加豆良乃禰(くすかづらのね) 葛根入地五六寸名也」(『和名類聚鈔』)。
「大埼の荒礒(ありそ)の渡り延(は)ふ葛(くず:久受)のゆくへもなくや恋ひわたりなむ」(万3072:「大埼」は現・和歌山県大崎)。
「十月(かんなづき)中(なか)の十日なれば神のいがき(斎垣)にはふくずも色かはりて」(『源氏物語』:「中(なか)の十日」は中旬や二十日)。
※ 「うず(髻)」:「うず(髻)」は2020年5月10日で、随分前なので一部再記します。
「うつしおひ(移し生ひ)」。うじおひ→うぞひ、のような音(オン)を経、「うず」になった。語末はO音I音の連音がU音になっているということです。「うつしおひ(移し生ひ)→うず」は、(自然界から自分へ)移動した(あるいは、反映した)発生。それにより自然の豊かさ美しさを自分に帯びようとする。髪に挿すなどし、木の枝葉、花といった植物を頭部に帯びたもの。花を一輪挿すようなものから、花冠のようなものまで、その形状はさまざま……。
「命(いのち)の全(また)けむ人(ひと)は……の熊樫(くまかし)が葉をうず(宇受)にさせその子(こ)」(『古事記』歌謡32:これは、古代、「くまかし(熊樫)」という語に、「くみあかし(汲み明かし)→くまかし」:この世に受けた生、生命、自然の恵みたるそのよろこびのようなもの、をすべて汲みとる:という意味合いでもあったのか。これは倭健命(やまとたけるのみこと)の遺言のような歌)。
◎「くすのき(楠)」
「きうせゐのき(来失せ居の木)」。(なにものかが)来て、居なくなってもまだそこに居るような印象の木。この木は全体的に揮発性の香気がある。姿がなくても香りが残りそこにあるような印象になるのです。樹木性植物の一種の名。
「昔(むかし)此(こ)の村(むら)に洪(おほ)きなる樟樹(くすのき)有(あ)り 因(よ)りて球珠(くす)の郡(こほり)と曰(い)ふ」(『豊後国風土記』)。
「楠 ……和名本草久須乃木 木名也」(『和名類聚鈔』)。