◎「くぐつ(傀儡)」
「きうきうつ(着浮き空)」。着ているところの、装着している、浮いた、空虚なもの、ということですが、どういうことかというと、体の前に布などで隠しつつ下げ据えた箱状のものがあり、そのうえで木製の人形が様々な仕草をし、踊りを踊ったりする。その仕組みがどのようなものなのかはわからないが、操る者の体の前面に浮いたようにあるその未知のからくりのある空間、それが「きうきうつ(着浮き空)→くぐつ」。そしてそれが、それにより操られその上で動く人形も意味した。
「機關(ククツ)木人も亦我有るべし」(『大般涅槃経』:「機關」すなわち、からくり、を「ククツ」と言っている)。
「機閞 ……木𤯔久久都」(『新訳華厳経音義私記』:「𤯔」は「人」と同字。この字は唐の武后(則天武后)が作った。「閞」は「関」ということか。つまり「機閞」は「機関」ということ)。
「傀儡子 ……和名久久豆 楽人所弄也」(『和名類聚鈔』)。
◎「くぐつ(裏)」
「くきうつ(潜き空)」。(いろいろな物が)潜(もぐ)る空虚なもの、ということですが、ようするに、袋状のものです。採取物その他、さまざまなものが潜(もぐ)り込む(つまり、入れられる)。
「…三津(みつ)の海女のくぐつ(久具都)持ち玉藻刈るらむいざ行きて見む」(万293:この「三津(みつ)」は「御津(みつ)」であり、古代難波の船着き場と言われる。官船が出入りしていたので「御(み)」。「難波能美津(なにはのみつ)」(万4331))。