「き」は「き(来)」は「(過去回想の助動詞の)き」にあるそれであり、現象化(出現化)記憶化が表現されるそれ。「ら」は情況を表現する。現象化(出現化)が起こる「き」、記憶化の衝撃が起こる「き」の情況にある、とは、出現に心を奪われたような情況になるということであり、それを引き起こす最も一般的要因は光です。この語は多くは「きらきら」と二語繰り返され、その現象化(出現化)・記憶化は持続します。この「きらきら」は、単に光、発光の印象だけではなく、社会的な、輝くような(美しい)存在感も表現する。また「きらきらし」(濁音化し、きらぎらし)というシク活用の形容詞もあり、「きらり」という表現もあり、この語による「きらめき(煌めき)」という動詞、「きらびやか」という表現もある。蝶の鱗粉を「きら」と言ったりもし、雲母(ウンモ)も「きらら」という。
「綺羅(キラ)」という語もありますが、これは漢語によるものであり、「綺」は模様のある絹、「羅」は薄布(うすぎぬ)。全体で、美しい衣服やきらびやかな装いを意味します。「世のおぼえ、時のきら、めでたかりき」(『平家物語』:これは上記の「きら」でしょうけれど、「綺羅」もかかっているような表現)。
「心にくく火はあなたにほのかなれど、もののきらなど見えて、俄(にはか)にしもあらぬにほひ…」(『徒然草』)。
「御あかしの……おそろしきまで燃えたるに仏のきらきらと見え給へるはいみじうたふときに…」(『枕草子』)。
「木梨軽皇子(きなしのかるのみこ)を立てて太子とす。容姿(かほ)佳麗(きらきらし)」(『日本書紀』允恭天皇二十三年三月))。
「きらきらしきもの。大将の御前駆(さき)追ひたる。孔雀(くざ)経の御読(みど)経」(『枕草子』)。
「㜫 媄 妍 三字同…支良支良志」(『新撰字鏡』)。「潔 …イサキヨシ キラキラシ」(『類聚名義抄』)。