◎「き(酒)」

「きひ(来日)」。来ている日(のようなもの。そのような状態になるもの)、の意。アルコール摂取で体が温まるからです。この語は「さけ(酒)」の雅語のような用いられ方をします。「みき(御酒)」。新嘗(にひなめ)などに用いる「くろき・しろき(黒酒・白酒)」の「き」は「くひ(来日)」。これは供物であり、来ることが予想され、期待されるからです。

「この御酒(みき:美岐)を醸(か)みけむ人は…」(『類聚名義抄』)。

「相飲まむ酒ぞ この豊御酒(みき)は」(万973)。

 

◎「き(男)」

古代、「き」が性別・男たる人を表現した(女は「み」と言う)。これは動態「き(来)」。古代では女のところへ男が行くという婚姻形態がなされており、「き(来)」は来(く)るもの、の意。

「いざなき(神名)」「かむろき(神漏伎)」「おきな(翁)」(女は「いざなみ(神名)」「かむろみ(神漏美)」「おみな(媼)」)。

◎「み(女)」

古代、「み」が性別・女たる人を表現した(男は「き」と言う)。これは動態「み(見)」。古代では女のところへ男が行くという婚姻形態がなされており、「み(見)」は、見るもの、の意。

「いざなみ(神名)」「かむろみ(神漏美)」「おみな(媼:老い女な)」(男は「いざなき(神名)」「かむろき(神漏伎)」「おきな(翁)」)。

 

◎「き(寸)」

「おき(置き)」。「お」は消音化した。これは古代の長さの単位ですが、基準となる何かを置くことが「おき(置き)」。置いたのは多分手の親指。曲げて当て、長さの単位とした。「ひとき(一寸)」は置き当てたその親指の長さ。だいたい三センチほどの長さらしい。

さらに、この「き(寸)」が、一般的に、(単位長たる何かが置かれた)単位を意味する。たとえば「きだ(段)」(単位たる田、や、破片、の意)。

「溝瀆(うなて)の流(みづ)、亦復(また)凝結(こほ)れり、厚(あつ)さ三四寸(みきよき)ばかり」(『日本書紀』:「溝瀆(うなて)」は「うねあて(畝当て)」であり、農業用水路たる溝(みぞ))。