◎「からげ(絡げ)」(動詞)
「からあげ(駆上げ)」。「から(駆)」はその項(7月2日)。相互に運動を連動させることに完成感のある動態を生じさせること。何かに何かを絡め巻きつけるようなことをしたり、そのようにして何かをまくり上げるようなことをしたりします。「着物の裾(すそ)をからげ」。「合羽(カッパ)からげて三度笠」は、「合羽」が全身に巻きついたようになっています。
「一尺許ナル銅ノ箱ヲ掘入(ほりいれ)ツ(掘り当てた) 銅ホソキヲ以テカラケタリ 打放テ開(あけて)見(みれ)ハ」(『打聞集』:細い銅線を幾重も巻いて封じてあった)。
「縢 ……カラグ ツツム」(『類聚名義抄』:「縢(トウ)」は『説文』に「緘也」とされる字であり、「緘(カン)」は、とじる、しばる、くくりしめる、といった意)。
◎「からし(酷し・辛し)」(形ク)
「須磨人(すまひと)の海辺常去らず焼く塩の辛き(からき:可良吉)恋をも我れはするかも」(万3932:「かも」は詠嘆)。
「からきつみ(酷き罰)」は死刑に処するような罪。
「からくも」は困難を経過していることを表現する。
◎「からす(烏)」
「からす(から鳥)」。「から」は鳴声の擬音。「す」は鳥を意味する(→「す(鳥)」の項)。鳥の一種の名。
「烏(からす:可良須)とふ(という)大(おほ)をそ鳥のまさでにも来まさぬ君をころくとそ鳴く」(万3521:「大(おほ)をそ」は、「をそ」が「小背(をそ):小さい逆のこと、小さい嘘(うそ)」であり、これが動物名「をそ(獺):かはうそ」と同音でありこれに比喩し(獺(かはうそ)は烏(からす)と同じように黒く)、「大(おほ)をそ」が、小さいどころではない、大きな嘘(うそ)を意味したということでしょう。つまり、「烏(からす)とふ(という)大(おほ)をそ鳥」は、カラスという大ウソつき鳥、という意味。「まさでにも」は、「まさたへにも(正堪へにも)」、正(まさ)を維持して、ということであり、後世なら、正真正銘、という語を挿入したりするのでしょうか。ここでは烏(からす)の鳴声を「ころく(許呂久)」と表現しています。これは、後世なら「カァー、ク」と表現されそうな鳴き声を「ころく:頃、来(もうその頃だ、(君が)来る)」と聞いたということでしょう。なのに全く来ない。ウソつき鳥め、ということであり、言っていることは、会いたい、来て、ということです。この歌は簡単な歌のようですが、正確には意味の把握されていない歌です)。