◎「からかひ」(動詞)
「からけあひ(駆け合ひ)」。「からけ(駆け)」は「から(駆)」(その項・7月2日昨日)の動詞化。この「からかひ」は自動表現も他動表現もあります。自動表現の場合は「Aがからかひ」、相手Bなら「Bにからかひ」「Bとからかひ」といった表現になり、心にかかっているものごとがBなら「Bをからかひ」にもなる(→「千たび心はすすめども心に心をからかひて、高野の御山にまいられけり」(『平家物語』))。他動表現の場合は相手Bなら「Bをからかひ」。他動表現の場合は「あひ」は「会ひ」になる。「からけあひ(駆け合ひ)→からかひ」は、動態連動すること・させること。これは動態合意などなくそうすることであり、「から(駆)」を構成している「かり(駆り)」は、駆り立て、のそれであり、それは動態を促すように、心情を煽るように、連動作用し、自己了解や動態合意などなくそうなったりそうしたりすることは(自動で)「葛藤(カットウ)する」や(他と)「あらそふ(争ふ)」や(他を)「いぢる(弄る)」(弄(いぢ)って馬鹿にする)と同じような意味になります。
「いよいよ心のはたらくことしづめがたけれども、なほとかく心にからかひて、その年も暮れぬ」(『古今著聞集』:心の中に葛藤があり躊躇している。これは自動表現)。
「あるないにはからかうまい」(『大恵書抄』:有る無いには動態連動しない、影響されない、関わらない)。
「互ひに食(くら)はれじと夜もすがらからかふほどに…」(『雑談集』:双方が双方に食われまいと争うようにかかわりあっている)。
「KARAKAI,―ō、―tta, カラカフ,㖕,………Inu ni―(犬にからかふ),……Amari Karakō to kui-tsukareru,……Kodomo wo―(子供をからかふ)」(『和英語林集成』:犬をからかふ、ではなく、犬にからかふ、と言っている)。
◎「からくみ」(動詞)
「からくみ(から組み)」。「から(駆)」はその項参照。それを組む(構成する)こと、動態連動させる状態で構成すること。
「大船三ぞう(三艘)からくみ」(「浄瑠璃」)。
「あぢな(味な)あき内(あきなひ:商)からくんで…」(「浄瑠璃」:これはものごとを、からくんだ、わけですが、工夫し、のような意味になる)。
◎「からくり」(動詞)
「からけいり(駆け入り)」。「からけ(駆け)」は「から(駆)」(その項)の動詞化。「いり(入り)」は、驚き入り、のそれのように、全く何かの動態になること。その思考が、複雑に相互作用全体的に完成した動態を生じさせる装置の現出努力やその作動のような状態になること。精巧・巧妙に仕組んだり企らんだりする。その思考や努力により現出したその物(装置)や社会現象がその連用形名詞化たる「からくり」。単にいろいろと複雑に工夫することも動詞の「からくり」なのですが、ものごとの成り行きを複雑に工夫することは人をだますため、あるいは、思い通りに動かすため、あやつるため、におこなわれることが多い(ものごとの成り行きを複雑に工夫することはそれ以外にほとんど必要性はないということです)。
「御唐櫃(からひつ)金物からくる」(『教言卿記(のりときキャウキ)』・山科教言やましな のりとき)という人の日記:巧妙・精妙に工夫して作る)。
「人形の人につかはれ、糸にからくられて…」(『他力領解抄』)。
「道すがら考ふれば、何とよくからくった人形ではないか、糸をつけてもなきに、歩いたり、飛んだり…言語まで言ふは、上手の細工なり」(『葉隠』)。
「此の綱を引けば杖が上る。又ゆるむれば打つ。……殊(こと)の外(ほか)能(うま)いからくりぢゃ」(「狂言」)。