◎「かぶつく」の語源

「きはめいつく(極めい点く)」。「きは」が「か」になり「めい」が「む」になりつつB音化している。「きはめ(極め)」は何かに関し限界的になることですが、ここでは、火が加勢を極め、という意味で言われます。「い」は連続感・持続感を表現する(→「い」の項)。ここで「つく(点く)」は火がつくこと。火が限界的につき続ける、とは、最大火力が続くことであり、強火であること。これは『古事記』歌謡43にある表現であり、一般的な語というわけではありません。「…中(なか)つ土(に)をかぶつく(加夫都久)真火(まひ)にはあてず…」とある。燃え盛るような火に直接あてるようなことはせず、弱火であぶる、ということ。

 

◎「かぶつち(頭椎)」・「くぶつち」などの語源

・「かぶつち(頭椎)」

「かぶつち(株鎚)」。「かぶ(株)」「つち(鎚)」はそれぞれの項参照。末端が「かぶ(株)」のように膨らんだ(厳密に言えば、特別な座(くら)のようになった)鎚(つち)。柄(え:握りの部分)がその槌(つち)のようになっているのが「かぶつちの剣(つるぎ)」。握りの末端部分が根塊状に膨らんでいる剣(つるぎ)です。

「頭槌劒(かぶつちのつるぎ)を帶(は)きて……………頭槌 此云箇步豆智(かぶつち)」(『日本書紀』)。

・「くぶつち」

「くびふつうち(首ふつ打ち)」。「ふつ」は瞬間的切断を表現する擬態。「うち(打ち)」は何かを現すことを表現する。全体は首をいともたやすく切断することを表現し、この表現により、それを生じさせるもの、それほどに威力のあるもの、を表現する。それは刀剣です。「くぶつちの太刀(たち)」とも言う。

「くぶつちの痛手負はずは鳰鳥(にほどり)の潜(かづき)せな」(『日本書紀』歌謡29:(竹内宿禰の手にかかり)切り殺されないということは、水に入るということだぞ(この後、追われていた忍熊王(おしくまのみこ)は、入水して死ぬ)(『古事記』歌謡39に似た歌がある))。

・「くぶつつい」

「くびふつうつい(首ふつ打つい)」。「くびふつうつ」までは「くぶつち」参照。語尾の「い」は代名詞のようなそれ。「い」の項参照。言っていることは「くぶつち」とほぼ同じです。首を一刀のもとになんなく切断してしまうもの、の意。「くぶつつい(久夫都都伊) いしつつい(伊斯都都伊)もち 撃(う)ちてし止まむ」(『古事記』歌謡11)。ここに「いしつつい」という表現もあります。これは「いしていうつい(石手射打つい)」。語尾の「い」は指示代名詞のようなそれ。意味は、石を手で射ること。石を射打ってでも撃(う)ちてし止まむ、ということ。

 

◎「かぶと(兜)」の語源

「かほぶちつよ(顔縁強)」。「ふち(縁)」は周縁を意味する。顔の周囲を強化するもの、の意。古代の兜は戦国時代のようなものではなく、顔の縁(ふち)全体を覆うものだった(これは土偶に例がある)。

「以甲(よろひ)冑(かぶと)弓矢(ゆみや)を以て」(『日本書紀』)。

「冑 説文云冑 和名加布度 首鎧也」(『類聚名義抄』)。

ちなみに、「胄(チウ)」の字と「冑(チウ)」の字はよく似てますが、「胄」は月(肉づき)五画で血筋(ちすぢ)や後継ぎの意。「冑」は冂(まきがまえ・けいがまえ)の七画で「かぶと」の意。