「がさテイ(がさ体)」。「テイ」は「体」の漢音。ありさま、や、様子、の意で用いられている(→「ありテイ(有り体)に言えば(ありのままに言えば)」(※1))。「がさ」は固く肌触りが悪く(擦過抵抗が大きく)粗雑・粗悪な印象を表現する擬態。「がさテイ(がさ体)→がさつ」は、人の言動がその「がさ」の印象であること(※2)。思慮深さは感じられず粗雑です。漢字表記に関しては、「粗笨」「粗雑」「粗末」といった書き方もなされますが、定着した書き方はないです。
「このふなあきなひぶねは、ものいひがさつにいふを、めいぶつとすること、人のしる所なり」(『東海道中膝栗毛』)。
「がさつは臆病のはなとや云が、此様なこんだ」(『雑兵物語』:小心者は粗雑粗暴な言動で小心な自分を悟られまいとする)。
※1 この「体(テイ)→つ」は、以前、「いきさつ(経緯)」の語源「いきセワテイ(行き世話体)」(2019年11月4日)にもありました。
※2 この擬態に「~つき」がついた「がさつき」という動詞もあります(一般にはこの「がさつき」の「き」が落ちている語が「がさつ」と言われています)。「ざわ」がつけば「ざわつき」、「うろ」がつけば「うろつき」、「もた」がつけば「もたつき」。また、これが二音重なって持続感が表現されれば「がさがさ」。これは周囲との擦過接触による騒音の印象も伴っています。
ちなみに、捜索や臨検を意味する俗語で「がさいれ」がありますが、これは、「さがす(探す)」の語頭の転語たる「がさ」による、警察からそうしたことを受けがちな者たちによる隠語であり、「がさがさ」やるから「がさいれ」というわけではありません。探(さが)しを入れる、という意味です。