◎「かさ(笠・傘)」

「きやしは(着屋為葉)」。身につけた屋(家)をしている(そのような働きをしている)葉(は)、の意。ようするに、蓮(はす)であれなんであれ、広めの葉を重ね頭部につけ(頭部に着)雨や雪に濡れぬよう防ぐもの。すなわち、身に着けて動く(移動する)家(のようなもの)でありそれは原形は植物の葉が利用されている。これは頭に乗せるように装着するものであり、古くは笠を身に装着する動作を「きる(着る)」と表現した。「(傘を)さす(差す)」と表現することが一般化したのはそれに柄のついたものを用いることが一般化してからです(古い時代にも、柄のついたものを用いる場合は「さす」と言う)。

「時(とき)に、霖(ながめ)ふる。素戔嗚尊(すさのをのみこと)、靑草(あをくさ)を結束(ゆ)ひて、笠蓑(かさみの)として…」(『日本書紀』)。

「小菅(こすげ)のかさを着ずて来にけり」(万2771)。

「雪のかきくらし降るに……随身めきてほそやかなる男の、かささして、そばのかたなる塀の戸より…」(『枕草子』)。

 

◎「かさ(嵩)」の語源

「きはさ(際さ)」。「さ」は、「さま(様)」のそれでもあり、S音の動感により、それ、と指し示すことにより指し示されている何かも表現する。「きは(際)」は存在・不存在の限界域。何かの変動する量があったとする。その変動量の存在・不存在の限界域とは、現在量です。すなわち「きはさ(際さ)→かさ(嵩)」は量規模を表現する。

「…かさ添えへてたたふる水や春の夜の雨」(『山家集』)。「みずかさ(水量)」。「かさばる(嵩張る)」。「かさにかかる」は、その時の勢力の量のようなものが把握され、その量によって、その量で、かかる。すなわち、自己の優勢、逆に言えば相手の劣勢、に乗じて(敵に)かかっていく。「(権威ある人の)威光をかさに着る」の「かさ」は「笠」。

 

◎「かさ(瘡)」の語源

「できもの」とも言われる皮膚の病変(天然痘や梅毒をそう俗称することもある)ですが、皮膚に現れる一部の盛り上がるような状態の増量感が「かさ(嵩)」と表現されたもの。古く、「かさかき」と言った場合、特に梅毒に罹患していることを意味しました。

 

◎「かさかさ」

「か」のK音による情況的交感と「さ」の擬音。それにより触感としては柔らかな、低い摩擦係数のある触感が表現され、経験的にそうした対象は乾燥していることが多い。二音連音は動態の持続を表現する。「かさかさとやぶの中へぞいりにける」(「狂言」)。

 

◎「かこひ(囲ひ)」(動)の語源

「かけおひ(懸け覆ひ)」。何かを、自分の影響性をかけて(自分の影響性との情況的交感を生じさせて)覆ふこと。それによりその何かと他との交流は阻害される。