◎「かぎり(限り)」(動詞)

「かききり(書ききり)」。「かき(書き)」は何かを現すこと→「かき(書き、その他)」の項(1月26日)。「~きり」は、「やりきり」のそれのように、完全に何かをし果てること。「かききり(書ききり)→かぎり」は、完全に現しはたし、ということ。

「限らぬ命のほどにて、行く末遠き人は、かへりてことの乱れあり、世の人に誹(そし)らるるやう ありぬべき」(『源氏物語』:命(人生)は内容的に限定できないから・何が起こるかわからないから)。

「かぎりける日たがへず(京に)入り給ひぬ」(『源氏物語』:経過的内容を、つまり、いつなのかを、限定した日)。

「命をかぎりける山ごもり」(『源氏物語』:命に内容限定を果たした山籠もり。死を覚悟した山籠もり)。

「来経(きへ)往(ゆ)く年のかぎり知らずて」(万881この状態のまま来る年行く年の内容限定(とくに、あと何年このままなのか)ができない)。

「いつもそううまくいくとはかぎらない」(経過の内容限定はできない)。「そういう人にかぎって…」(そういう人に内容限定されて…)。

 

◎「かきみる」

「かきみる(かき廻る)」。「かき」は、かき消す、かき曇る、などにあるそれ→(「かき(掻き(交き))」の項・1月27日)。「み(廻)」はその項(下記※)。「かきみる(かき廻る)」は、たちどころに全的な影響を与えるような印象で各地を廻(めぐ)る。『古事記』の歌(歌謡6)にある表現。

「うち廻(み)る島のさきざき かき廻(み)る(加岐微流)磯のさき落ちず」(『古事記』歌謡6:「さき(佐岐)」は、埼、と解されていますが、先(動態の前方・目的地・到着地)でしょう)。

※ 「み(廻)」という動詞は幾つもある地点を次々と巡回していくこと、さらには、それを行って帰ってくること、すなわち周回すること、を意味しますが、上一段活用です。すなわち連用形は「み(廻)」。「みる(廻る)」は連体形。ちなみに、この「み(廻)」は乙類表記。「み(見)」は甲類表記。