◎「かがり(篝)」の語源
「かげやり(光遣り)」。(火による)光(かげ)を周囲に与えるもの。周囲を明るくすること・もの、の意。物の場合、ここに燃焼材を入れ、火を焚き、明かりを得る。その火も「かがり」(や「かがりび(篝火)」)と言う。さまざまな処、さまざまな場面で用いられはしますが、鵜飼におけるそれが特に印象的なものになっています。「…鵜飼(うかひ)伴(ともな)へ かがりさし なづさひ行(ゆ)けば…」(万4156)。
◎「かがり(縢り)」(動詞)の語源
「かけかはり(懸け交はり)」。直線的に進行するものを何かに懸(か)け(なにかに交感を生じさせ)それによりその動態が交(か)はる、その動態が従来のままではなくその動態に従来の動態と交感のある動態になる、こと。たとえば、ある程度の間を空けて縦に並べられた極めて細い竹に横方向から同じ極めて細い竹が一本めに懸けられ同時に下へ方向を変えて進み二本めに懸けられ同時に上へ方向を変えて進み三本めに懸けられ同時に下へ……を繰り返す。横方向から幾本もこれが繰り返されると竹は編まれる。これは籠(かご)にもなる。裁縫の「かがりぬひ(かがり縫ひ)」の場合、布端に添い、糸は、布端からほんの少し間を空けた部分で、表から裏へすすみ、布端へ上がり布端に糸が懸かると同時に糸はその進行方向を交差的に変え裏から表へ向かい、布端に沿い、最初の侵入点から少し離れた点でまた布へ侵入し表から裏へすすみ…、これを繰り返し進んでいく(糸は、布を挟みつつ、ジグザクに進んだ痕跡を残すことになる)。
「(新羅の王が)乃(すなは)ち人(ひと)を任那(みまな)の王(こきし)のもとに使(や)りて曰(いは)く。『高麗(こま)の王(こきし)我(わ)が國(くに)を征伐(う)つ、此(こ)の時(とき)に當(あた)りて、綴(かが)れる旒(はたあし)の若(ごと)く然(しか)なり、…』」(『日本書紀』:「はたあし(旒)」は「旗足(はたあし)」であり、古代の、長い旗の末端から引く本も伸びた部分。これが綴(かが)られて出来ていたらしい。国がその如くだ、とは、ただ吹く風に翻弄されるままの状態だ、ということ)。
◎「かき(垣)」の語源
「きはきり(際切り)」。「り」は脱落した。限界域部分を他と切断する(分ける)もの。これは土地に関して言い、それにより(土地の)面的範囲の限界を明瞭にする。素材や形状はさまざまであり、ただ樹木が並べて植えられているものや柱と板で境を公示しているものもあれば、造形的に芸術的なものもあります。
◎「かき(柿)」の語源
「あかき(赤黄)」。その実の赤いような黄色いような色彩の印象による名。植物の一種、特にその実、の名。「柿 ……和名賀岐 赤実菓也」(『和名類聚鈔』)。
この語の語源説としては「赤木(あかき)」とするもの(「き」の甲乙表記が異なります)、形容詞「赤(あか)き」とするもの(形容詞連体形が名詞化するのは不自然に思われます)、その他があります。