◎「かがやき(輝き)」(動詞)
元来は「かかやき」と清音。「ひかひかあやき(光光文き)」。「ひ」は無音化した。「ひか」は光による光覚刺激を表現する擬態であり連音はそれが持続的であることを表現する。「あやき(文き)」は「あや(文・綾)」の動詞化。「ひかひかあやき(光光文き)→かかやき」は光(発光・光覚刺激)が「あや(文・綾)」のように感じられること。「あや(文・綾)」の原意は一点から同心円状に広がっていく幾重もの輪です。そこから複雑な模様の意にもなります。
「山は鏡をかけたるやうにきらきらと夕日にかかやきたるに」(『源氏物語』)。
「めでたき御装束のにほひ(色彩)をととのへて、めづらしう立ち出で給ふ、目かかやくばかりなり」(『浜松中納言物語』:これは、目が発光しているわけではなく、視覚刺激が目がくらむようだということ)。
◎「かがやき(恥き)」(動詞)
「かきやはき(柿や掃き)」。この場合の「はき(掃き)」は、「はけ(刷毛)」を掃(は)くこと。すなわち白粉(おしろい)を塗ること、化粧をすること。ただし、ここでは白粉を塗るのではなく、塗るのは「かきや(柿や:柿のようなもの)」。「かきやはき(柿や掃き)」は「かきやはく(柿や掃く)」と言えば、掃くのは柿か(いやそうではない)、という倒置表現であり係り結び。この表現がそのまま動詞化している。つまり、意味は、柿でも掃いたのか、ということであり、柿でも掃いたかのようになることであり、(顔が)赤くなることであり、恥じた状態になること、や、恥ずかしがること、を意味します。また、自分がそうなるのではなく、他者に「柿や掃く」ことも可能であり、その場合は他者を恥ずかしい状態にすること、他者に恥をかかせること、を意味します。
「女、扇を以て顔に指し隠してかがやくを…」(『源氏物語』:柿でも掃いたかのようになり→赤くなり→恥ずかしがり…、)。
「昼も夜も来る人を、なにしにかは(どうして)、『なし』ともかがやきかへさむ」(『枕草子』:(『不在です』と言って)柿でも掃いたかのようにし→顔を赤らめさせ→恥ずかしい思いをさせ…)。
※ この「かがやき(輝き)」と「かがやき(恥き)」は一般に同語と考えられています。恥ずかしい思いがし顔が赤くなることが「かがやき(輝き)」であり「かがやき(恥き)」であるらしい。しかし「かがやき(輝き)」に他動表現はないです。