「まんこ」に「お(御)」が添えられた表現であり(当初から「お(御)」ないし「おん(御)」が添えられている可能性はある)、「まんこ」は「マンクオン(満救恩)」。「ク」は「救」の呉音。語尾の「ン」は無音化。「マンクオン(満救恩)→まんこ」は、救(すく)いと恩(オン)に満ちている、という表現。((性的快感という意味で)男にとって、そして(子が生まれるわけであるから)世界や人類にとって)そんな身体部分だということ。これは女性身体の性器部分を意味する俗語ですが、多分江戸時代の相当後期に戯作に関心があるようなタイプの男が(文人風に気が効いているつもりで)言い出した戯表現でしょう。これは戯表現であり、中国語では、Aが満ちる(Aがいっぱいになる、Aで一杯になる)、は、A満、AがBで満ちる、は、A満B、か。ようするに仏教語の「満願」の「願」が「救恩」になっているような表現です。
前記のようにこれは女性身体の性器部分を表現する俗称ですが、これは江戸時代の相当後期に江戸で生まれた語ではあろうけれど、最近まで、社会的にさほど、ましてや全国的に、一般的な語というわけではありませんでした。しかし、1970年代にデビューした大阪の紅萬子(くれなゐまんこ)という女優に、1980年代後半、ドラマ出演の際、制作のNHK側からその名にクレームがついたりしており、この人は2015年1月1日より紅壱子(くれなゐいちこ)に改名している。1984年には、この語を知らなかった香川出身の若い女性タレントがテレビでこの語を発し問題になったりしている。ようするに、この語を全国的に広め普及させたのは問題を起こし話題化したNHKであり、テレビでしょう。
「おまん子のむく毛は馬がこするやう」(「雑俳」『柳多留』:この句は天保時代(1830~44年)に入ってからの粗製濫造期のものでしょう。ちなみに、明治初年は1868年)。
「Omanko, オマンコ, 陰門, n. The vulva, Syn, IMMON, TSUBI.」(『和英語林集成』(1872年):ここで「TSUBI」と書かれている「つび」はその項)。
「おまんこ」という語が現れる以前、女性性器の俗称は「ぼぼ」(その項)が一般的であり1600年代最初期に九州方面で書かれた『日葡辞書』の項目には「Bobo(ぼぼ)」「Tçubi(つび)」はありますが、「おまんこ」はありません(『日葡辞書』のアルファベットで書けば「vomanco」か)。「ぼぼ」という語は、『日葡辞書』にその語発生の初期情報があることを考えれば、室町時代ころにうまれているのかもしれません。「つび」は『和名類聚鈔』(900年代前半)にある。それより古くは「ほと」がある。この語は古代からあり、女性性器部分、あるいは、そのあたり、を表現する語としてはこれが最も古い。