◎「おほほし」(形シク)

「おほおほし(朧朧し)」。「おほ (朧)」が二音連音し語幹となったシク活用形容詞。「おほ(朧)」はその項(11月19日)。ぼんやりとしていてなにかが明瞭に把握できない状態にあることを表明します。発音は「おぼぼし」にもなったでしょう。

「ぬばたまの夜霧の立ちておほほしく照れる月夜の見ればかなしさ」(万982)。

「於保保思久(おほほしく)」(万2450)。

「海(あま)をとめ漁(いざ)り焚く火のおぼほしく(於煩保之久)…」(万3899)。

 

◎「おほほれ(溺れ)」(動)

「おほほれ(朧呆れ)」。ぼんやりと意識が浮放してしまっているような、朦朧としたような、状態になることなのですが、酒や何かの物事に身も心も奪われたような状態になっていることも表し、水への沈溺状態も表現します。

この言葉は音(オン)が「おぼれ(溺れ)」になります。

「故(かれ)、弟(おとのみこと)潮溢瓊(しほみちのたま)を出(いだ)せば、則(すなはち)潮(しほ)大(おほ)きに溢(み)ちて、兄(このかみ)自(みづか)ら沒溺(おほほる)」(『日本書紀』)。

「ただ涙におぼほれたるばかりをかごとにて(弁明言にして)、はかばかしうも答へやらずなりぬ」(『源氏物語』)。

「酒に躭(おぼほ)れたる人」(『地蔵十輪経』)。

「さる細かなる灰の目鼻にも入りて、おぼほれてものもおぼえず」(『源氏物語』)。

 

◎「おほまか」

「こまか(細か)」を「小まか」ととらえ、「小(こ)」ではない「大(おほ)」とした「大まか(おほまか)」。言葉遊びのような表現。意味は「こまか(細か)」ではないこと。

「大まかに旦那の刻む干大根」(「雑俳」)。

 

◎「おほましまし」(動)

「まし(坐し)」が二度重なり「おほ(大)」が添えられた尊敬表現。「まし(坐し)」は「いまし(坐し)」の「い」が落ちているものであり、「おほいましいます→おほまします」は、「おほいます」という状態で「います」という表現になる。これに助動詞「~しめ」がついた「おほましまさしめ」という表現もあります。

 

◎「おほみ・おほむ(大御・御)」

「大御(おほみ)」であり、非常に尊いもの・ことに添えられる尊称。「おほむ」や「おん」はその音便。これは長い歴史的変遷を経て尊称の「お(御)」になります。

「お宮(みや)」、「お供(そな)へ」、「お米(こめ)」、「お水(みづ)」、「お手紙(てがみ)」、「お隣(となり)」、その他。