◎「おてんば(お転婆)」

「てんば(転婆)」に「お(御)」がついた語。「てんば(転婆)」は下記。

 

◎「てんば(転婆)」

「テンばや(転「ばや」)」。「や」の退行化。「ばや」は希求・願望を表現する助詞。逸(はや)る思いで、なにかをしたい、ある状態・動態になりたい、という思いを表現する。たとえば「行かばや」は「行きたい」という思いを表現します。その「ばや」が転じる(前後が逆になる)と「やば」(危険)になる。「やば」は危険(不安)を表現します(→「やばいぞ」)。「テンばや(転「ばや」)→てんば」は、「ばや」が「やば」であること、「やば」(危険(不安))になるある人(特に女の子)の性格や動態がそのようなものであること、すなわち、希求(「ばや」)が危険(不安:「やば」)と隣り合わせであること、また一般的には、親や周囲の諌(いさ)めなど耳もかさず望むままに事を行い(社会的に)危険な状態に陥ること、を表現します。古くは男女を問わず言いましたが、女の子を言うことに限定されていくのはそれが特に印象的だからでしょう。『俚諺集覧』の「てんば」の項には「古き俗語」とあります。「やば」という語は1802~14年に出版された『東海道中膝栗毛』にはあるのですが、1800年代前半に書かれたと推定される『俚諺集覧』にはない。『俚諺集覧』には「おたんちん」や「おたんこなす」もない。「おたんちん」に関し「此ごろのはやりことば」と書いた『鄽数可佳妓(みせすががき)』が出版されたのが1800年。「転婆」は当て字。

「ヱゝきついてんばどもじや」(「浄瑠璃」『傾城天の羽衣』四幕目:これは男たちをそう表現している。考えや遠慮のない粗雑な者たち、といった程度の意味)。

「聞きしより宮司の娘てんばなり」(「俳諧」)。