◎「おせくくに」の語源
「おほせきゆくに(大関緩に)」。この場合の「ゆく」は緊張して縮まらず弛緩して広がっている印象→「ゆくゆく」の項。大きな関(せき)のような緩緩(ゆくゆく)とした印象で、ゆったりと広がるように、の意。
「すし鮎(あゆ)のおせくくに広らかなるが、しり(尻・尾)かしら(頭)ばかりをして、三十ばかりもりたり」(『宇治拾遺物語』:「すし鮎(あゆ)」は酢漬け状態になった鮎。「しり(尻・尾)かしら(頭)ばかりを(お)して(圧して)」は、尾と頭を重ねたということか)。
◎「おせくみ」(動詞)の語源
「おほせきくみ(大関組み)」。大きな関(せき)を組んだような印象になること。行く手に立てば行く手をふさがれるような印象になります。この語は語義未詳とされますが、背が曲がっていることか、とも言われます。「せ」が「背」を、「くみ」が「佝(ク)」や「かがみ(屈み)」を、思わせるからということでしょうか。
「丈高くおせくみたる者、赤髭にして年五十ばかりなる、たちはき(太刀佩き)、ももぬき(股貫)はきていできたり」(『宇治拾遺物語』:「 ももぬき(股貫)」は皮製の腿(もも)に達する深い靴)。
◎「おせり」(動)の語源
「おひし(覆ひ為)」に助動詞「り」のついたもの。覆(おほ)ふことをした、と言っているわけですが、見る動態でそうする。すなわち、見渡す。「し」がなぜE音化するかに関しては「り(助動)」の項参照。
「天皇(すめらみこと)彼(か)の菟田(うだ:奈良の地名)の高倉山(たかくらやま)の巓(いただき)に陟(のぼ)りて域(くに)の中(うち)を瞻望(おせ)りたまふ」(『日本書紀』)。