「おほみ(大御)」、たとえば「おほみこと(大御言)」、が永い歳月と社会遍歴を経て「お」の一音になったもの。そうなるまでの過程には「おほむ」や「おん」などがあります(平安時代に、限定的な語についた「おほ(大)」が「お」になったりもしています。「おほもの(大膳)」→「おもの(大膳)」)。「お水」「お米」「おタク(御宅)」「おでかけ」その他、尊重感の表現としてこの言葉はさまざまな言葉に付され、さらには、ただ習慣化し、とりわけ尊重緩を感じているわけでもないが、粗雑な言葉遣いをしている印象を受けることを避けるためにふされていたりもしています。『お元気ですか?』『元気か』。また、完ぺきに厳密にそうなっているというわけではありませんが、語頭に付して尊重感を表現する場合、日本語には「お」、漢語には「ゴ(御)」が付される傾向が強いです(「ゴメン(御免)」「ゴハン(御飯)」その他(「お掃除(おソウヂ・おサウヂョ)」といった例などはあります))。

 

「御(呉音、ゴ、漢音、ギョ、中華人民共和国音、イ(yi)とユ(yu)の中間のような音を少し延ばす(下記※))」は漢語ですが、「馭(ギョ・ゴ)」にも通じ、扱う・コントロールする・管理支配する、といった意味になり、その中枢に天子の居る「御座(ギョザ)」があり、といったことから、権威を表現し、尊重感を表現する語としてさまざまな語にふされるようになりました。

 

※ 以前にもどこかで触れましたが、中国語は、数千年のスパンで、K音・G音系の音がY音系へ向かっていきます。たとえば「言」は呉音、ゴン、漢音、ゲン、中華人民共和国音、イェン。「句」は漢音、ク・コ、中華人民共和国音、ジウ(jiu)のような音。「金」は呉音、コン、漢音、キン、中華人民共和国音、ジン(jin)のようなヒンのような音(オン)。中国語は語音に意味がないのではないかと思うような変化をします。「假(仮):呉音、ケ、漢音、カ」も、ジァ、のような音(オン)。『假的(ジァダ)』は中国語で『嘘(うそ)だ』の意。