◎「うたき」(動詞)の語源

「うとはき(『う』鋭吐き)」。『う』を鋭(と)に吐いた、ということ。『う』は動物が喉の奥から発するような音声(唸(うな)り声)の擬音。「と(利・鋭)」は、存在感・効果感が累進的に増していく印象を表現する→「と(利・鋭)」の項。この場合の、効果的、とは、相手に恐怖を感じさせるに十分な、ということです。すなわち「うとはき(『う』鋭吐き)うたき」は、恐ろしい唸り声を発し、のような意。後世のことでしょうけれど、豚が鼻を鳴らすことなども言うようです。「其の猪(ゐ)を射たまへる時に、其の猪(ゐ)怒りてうたき依(よ)り来」(『古事記』:猪(ゐのしし)が恐ろしい唸り声を発し迫って来たということでしょう。ちなみに、猪は体重約220キログラムのものも捕獲されています。古代ではもっと大きかったかもしれません)。

 

◎「うだき(抱き)」(動詞)の語源

これは「うでだき(腕抱き)」であり、腕で抱くこと。腕全体をもって抱きしめることなのですが、「だき(抱き)」に関しては以前「いだき(抱き)」の項で書いたことをほとんどそのまま書きます(下記※)。「甚だ熱き銅の柱を抱(うだか)しめられて立つ」(『日本霊異記』)。

※ 「だき(抱き)」

「だき(抱き)」という動詞は、いずれそれを個別に触れることにはなりますが、手で何かをたばねまとめるような(容量を増すという意味も含め)高めることを意味する 「たき(高き(下記※))」という動詞に由来するもので(古く、そういう動詞がありました)、これに由来し「いだき(い抱き)」「うだき(う抱き)」「むだき(む抱き)」という動詞も生まれています。「だき(抱き)」は、一般に、それら「うだき(う抱き)」「むだき(む抱き)」などの語頭が落ちた後発的な動詞、と言われるわけですが、その「うだき(う抱き)」「むだき(む抱き)」などを生じさせた「たき」、あるいは「だき」、という動詞は相当に古くからあるものと思われます(それにより『古事記』歌謡4の「たたき」や「そだたき」があります)。

「高き」という表記に一般性はありません。他の「たき」という動詞と区別する記号のようなものです。他の「たき」とは、例えば「(米を)炊(た)き」。