◎「いり(入り)」(動詞)の語源
「い」は進行感を表現します。進行の自主動態情況にあることが表現されます。動態が持続進行します。「妹(いも)が寝(ぬ)る床(とこ)のあたりに岩ぐくる水にもがもよ(水であったら…)いりて寝まくも」(万3554)。「天人の中に持たせる箱あり。あまの羽衣いれり。又あるは(あるいは)不死の薬入(い)れり」(『竹取物語』:これは、入れた、という他動表現ではありません。入(い)り、に完了の助動詞 「り」がついているもの。つまり、はいっている、の意)。
動詞連用形についてまったくその動詞の動態になってしまうことも表現されます。その動態が際限なく進行していくような状態です→「寝入り」「驚き入り」「恐れ入り」その他。
◎「いり(要り)」(動詞)の語源
「いり(入り)」のように、この「い」も進行感を表現するのですが、その「い」は「入り」のような自主動態的なものではなく、客観的な情況での進行、その存在作用の持続、を表現します。「AがBにいる」と言った場合、Aという動態や存在作用がBに進行します(Bに抵抗を生じさせたりBから排除されたりしない)。そしてAの特定的提示はそのAの必要性や必然性を表現します。「暇いるわざ」(時間がかかるわざ)。「これいる?」「いらない」。「気にいる」「堂にいる」(「堂(ダウ)」は公明盛大であることのたとえ)の「いり」もこれ。