◎「いびき(鼾)」

「いひびき(睡眠響き)」。「い」は眠っている状態を表現します(「い(睡眠)の項」・10月(去年)11日)。眠っている際の(その眠っている人から生じるその呼吸に由来する)響き。

 

◎「いびつ(歪)」

「いひびつ(飯櫃)」。飯(めし)を入れる櫃(ひつ)。物がいびつになる、は、昔の飯櫃(いひびつ)が円を少しつぶしたような形をしていたことによります。真円が理想的な形と思われ、理想的なあるべき形が少し押しつぶされたように変形しているものやことが「いびつ」。これは昔から分かっている「いびつ(歪)」の由来であり、ここで初めて言われているというわけではありません。古くは「いびつ(歪)」は「飯櫃」とも書きました。「飯櫃(いびつ)なる面桶(めんつ)に…」(「俳諧」:「面桶」は「めんつう」や「めんつ」と言い、一人前ずつ飯を盛って配る平たい曲げ物容器を意味しますが、これは「メンツウ(免痛)」でしょう。これは、まるで托鉢における布施のように、巡礼に食べ物を与える際に用いたりしますが、飢えを癒すことを、痛(ツウ)を免(メン)じる・痛みを免れさせる、と表現したわけです)。

 

◎「いびり」(動詞)の語源

「インびいり(隠火炒り)」。「隠火(インび)」は、隠れていて表に現れない火。奥深く分かりにくい火。この表現は「隠微(インビ)」の影響があるでしょう。「隠微(インビ)」は、かすかでわかりにくいこと。意味が奥深くわかりにくいこと。「いり(炒り)」は弱火で長い時間をかけて加熱処理すること。「インびいり(隠火炒り)→いびり」は、意味が奥深く分かりにくいことで長い時間をかけて加熱処理するように人を責めたり痛めたりすること。「嫁いびり」。しつこく、執念深くせがむことも言います。「娘の子はねね様のべべを五つ縫って下されといびれば…」(「黄表紙」)。江戸時代の方言辞書『浜荻(久留米)』には「いびる 火にてあぶる也」とあります。