これは地名であり古い国名ですが、古代、杵築(きづき:出雲大社のある地)の南方あたりに、五つの、(川の流れ自体も含めて)「みを(水尾)」(独自の存在が印象づけられる線状(帯状)の水の流れ)があったのではないでしょうか。それによる「いつつみを(五つ水尾)→いづも」。「出雲」という表記は(枕詞にも影響されつつ)良い字を選んだことによるものでしょう。空へたちのぼるような印象の表記です。この出雲の地は、枕詞「やくもたつ」の「くも」が「くも(雲)」と同音であることによる影響でしょう、相当に古くから雲に関連づけられています。
「いづも(出雲)」の枕詞に「やつめさす」「やくもさす」「やくもたつ」があります。
・「やつめさす」:「やつめさす(家つ目さす)」。「つ」は所属を表現する助詞。「さす」は「兆(きざ)す」などのそれであり、何かが気配的に感じられる(現れる)こと。「やつめ(家つ目)」とは家族の目、親の目や子の目、妹(いも)の目。「やつめさす」は、それらが現れるように感じられることを表現します。
・「やくもさす」:「やけいもさす(家気妹さす)」。「やけいも(家気妹)」は、家なる妹(最愛の人)、家にある状態の妹(いも)。「さす」は「やつめさす」に同じ。家なる妹(いも:最愛の人)、家にある状態の妹(いも)、が現れるように感じられることを表現します。
・「やくもたつ」:「やけいもたつ(家気妹立つ)」。「たつ(立つ)」は何かが発生することを表現します(→「たち(立ち)」の項)。家なる妹(いも)、遠く離れた家にある妹(いも)、が立つ(現れる・感じられる)。
これらの枕詞が「いづも」にかかるのは、この言葉が「(この地を)いづるも(出づるも)→出(で)ても。出たのに」を思わせたから。「いづも」を「いづるも」の「る」の省略と聞き、読んだわけです。つまり、この枕詞は、家や故郷(古代的な意味での国)を出てもいつも家族や最愛の人が思われること、最愛の人や、家や、故郷(故国)が忘れられない、思い出す、「いづも」はそれほどに懐かしい良い地だ、といったことを表現しています。ただし、この「やくもたつ」という枕詞は「いづも」が「出雲」と書かれた関係で「いやくもたつ・やくもたつ(彌雲立つ・八雲立つ)」(雲が沸き起こる・たくさん起こる)と、雲に関連づけて解されることが多いです。しかしこの地に雲に関する特異な、特徴的な現象はありません。