◎「いつか(何時か)」の語源

「か」は気づき考える語感の「か」ですが、この場合の「いつ」にも将来的な場合と過去的な場合(常・普段)があります。「遠くして雲居(くもゐ)に見ゆる妹(いも)が家(へ)にいつかいたらむ歩め黒駒(くろこま)」(万3441(本文細注の方の歌):将来的な場合)。「いつか千歳を我は経にけん」(『古今集』:いつ私は千年を経てしまった(齢をとってしまった)のだろう)は現実的・過去的。「塩釜にいつか来にけむ」(『伊勢物語』:いつの間にか、ということ。過去的)。

 

◎「いつかし」(形容詞シク活用)の語源

「いつゆかし(稜威ゆかし)」。「ゆ」の子音は消えました。「いつ(稜威)」(超越的権威。「「いつ(稜威)」の項)を感じ、それがゆかしいものであることの表明。「ゆかし」は心引かれる好ましいものであることを表明します。権威性を感じ、それに美しさなども感じたりし、それが心惹かれる好ましいものであることを表現します。「節会(せちゑ)の日、内の儀式をうつして、昔のためしよりも事そへて、いつかしき御有様なり」(『源氏物語』)。似たような印象の形容詞に「いつくし(厳し)」(形シク)があります。これは後に「いつくしみ(慈しみ)」という動詞にもなる形容詞ですが、「いつかし」とは別語です。