◎「いたぶり(甚振り)」(動詞)の語源
「いたみふり(甚身振り)」。「いた (甚)」は12月16日。「いたみふり(甚身振り)」は、激しく身を振ること。「風をいたみ(甚み:風は激しく)いたぶる波の...」(万2736:風が甚だしく激しくその身を振る波の…。この「いたみ (甚み)」は、「いた(甚)」の形容詞表現「いたし(甚し)」の語幹を動詞化したもの。この万2736のその原文表記は「痛」)。
他動表現でも言います。「大木の枝も幹も凄まじい音を立てて、一度に風から痛振(いたぶ)られるので」(『彼岸過迄』夏目漱石)。
◎「いたぶり」(動詞)の語源
「いひて(いって)あぶり(言ひて(言って)炙り)」。言語でじわじわと火で炙(あぶ)るような思いにさせることであり、じわじわと言い、脅(おど)して(心的に痛めるようにして)何かを強請(ゆす)り取ることを言います。
「いわう(言はう)かと下女をいたぶる樽拾ひ」(「雑俳」:「樽拾ひ」は空き樽を集めて回る酒屋の小僧)。
「ほれぬ男にいたぶりをして嬉しがらすも傾城(ケイセイ)の商売」(「浮世草子」:「傾城(ケイセイ)」は下記※)。
※ 「傾城」は「傾国」と同じ意味で言われ、「傾国」は『漢書』や白居易(ハクキョイ)の詩に由来し「美女」も意味し、さらに転じて遊女を意味する俗な気の効いた言い方にもなっています。中国語でも「傾城傾国」は絶世の美女を意味します。しかし、それが遊女を意味する俗語的表現は中国語にはないように思われます。また、中国語で「城」は都市全体を囲う壁であり、日本における「しろ(城)」のような建造物を意味するわけではありません。つまり、中国語における「傾城」は都市全体を傾ける、という意味。北京や南京などにも20世紀までそうした都市城壁はありましたが、中華人民共和国成立後、撤去されました。「一顧傾人城 再顧傾人国」(『漢書』・外戚伝上)。「漢皇重色思傾国」(白居易「長恨歌」)。