「いでだき(出で抱き)」。積極的に前へ進み出て何かを「だく(抱く)」状態になること。「だき(抱き)」に関しては下記※。「こ(子)をいだきつつ(舟から)おり(降り)のり(乗り)す」(『土佐日記』)。

胸に思いを保つというような意味でも「いだき(抱き)」と言いますが、この場合の「い」は、「い通ふ」(通い続ける)にあるような、持続を表現する「い」でしょう。「天孫(あめみま)のかいまみ(垣間見:原文は「視其私屛」)したまふことを知りて、深く慙恨(はぢうら)みまつることを懐(いだ)く」(『日本書紀』神代下)。

 

※ 「だき(抱き)」

「だき(抱き)」という動詞は、いずれ個別に触れることにはなりますが、何かをたばねまとめるような(同時に容量を増すような) 「たき(高き)」(「高き」という表記に一般性はありません。他の「たき」という動詞と区別する記号のようなものです)という動詞に由来するもので、これに由来し「いだき(い抱き)」「うだき(う抱き)」「むだき(む抱き)」という動詞も生まれています。「だき(抱き)」は、一般に、それら「うだき(う抱き)」「むだき(む抱き)」などの語頭が落ちた後発的な動詞、と言われるわけですが、その「うだき(う抱き)」「むだき(む抱き)」などを生じさせた「たき」、あるいは「だき」、という動詞は相当に古くからあるものと思われます(それにより『古事記』歌謡4の「たたき」や「そだたき」があります)。