◎「いすず(五十鈴)」

「いしうつしゆ(石現し揺)」。「つしゆ」が「ず」になっています。「うつし(現し)」は動詞であり明瞭な現実感をもって現すこと。石が明瞭な現実感をもってありありと現れています。しかしそれが揺れている。水が清らかにきらめき美しいのです。川の名。伊勢神宮の内宮神域内を通る有名な川。

 

◎「いすすき」(動詞)

「いそうすうき(いそ薄浮き)」。「いそ」は「いそいそ」や「いそぎ(急ぎ)」のそれであり、落ち着かない状態になっていることを表現します。そうした状態になりながら薄く、ほんのりと、浮いたような気分になっていることが「いそうすうき(いそ薄浮き)→いすすき」。ふと体がほてったような「浮き」もあれば、不安げに心が漂うような「浮き」もあります。前者は『古事記』に、後者は「祝詞(のりと)」にあります。

「ここに其の美人(をとめ)驚きて立ち走りいすすきき」(『古事記』)。

「御床(みゆか)つひの さやき(騒き) よめの いすすき いづつしき事なく」(「祝詞」・大殿祭(おほとのほかひ):「つひ」は「つ」は所属を表現する助詞であり、「ひ」は「ひひき(響き)」にあるそれでしょう。床全体が響くような状態になります。「よめ」の原文は「夜女」ですが、夜に亡霊のような女が出てくるというわけではなく、この「め」は「みえ(見え):「え」は驚きを表現する」であり、夜に、(あってはならない何かを)見て驚くような、そんな情景が不安に浮き上がり(「いすすき」)、ありありと見えてしまうこと(「いづつしき」こと)がなく、が、「いすすき いづつしき事なく」ということでしょう。つまり、そういう不吉な怪しい造作になっていないということ。「祝詞」・大殿祭のこの部分は建造物の不調がいろいろと言われています)。

 

◎「いすろこひ」(動詞)の語源

「ゆすりおくゆおひ(揺すり起くゆ覆ひ)」。(語頭の)「ゆ」と「い」は交替することが多い。二番目の「ゆ」は経験経過を表現する助詞。「ゆすりおくゆおひ(揺すり起くゆ覆ひ)」は、身を揺するように起きる(現れる)ことによって、世を覆うこと。神々の出現(影響の現れ)がそのように表現されています。この語は「祝詞(のりと)」の「大殿祭(おほとのほかひ):「ほかひ」は「ほき(祝き)はひ(這ひ)」にあるものですが、一般的な、庶民が日常的に言っている表現とは思われません。「神たちのいすろこひ荒(あれ)びますを…」。

 

◎「いそ(磯)」の語源

「いししほ(石潮)」。「しほ(潮)」は海水を意味し、石(岩石)と潮(しほ)が混ざるような印象のところ。岩石の多い波打ち際を言います。意味発展的に、川(岩の多い川)でも言いました。「いその間(ま)ゆ(いその間から)たぎつ山川」(万3619)。「磯(いそ)の上(うへ)に根ばふむろの木…」(万448)。