◎「いさみ(勇み)」
「ゆさみ(揺さみ)」。「ゆさ(揺さ)」の動詞化。「ゆさ」は躍動を、身体が内部から揺れが発動するような状態になることを、表現する擬態。「ゆさみ(揺さみ)」は、躍動する状態になること。「いさみたる猛(たけ)き軍(いくさ)と…」(万4331)。
◎「いさめ(勇め・禁め・諌め)」
「いさみ(勇み)」の他動表現。躍動感をもって他に影響を与えること。他者に影響を与えそれを躍動的にしようとし躍動的になれば、気持ちを引き立て、励まし、といった意味(勇め)になり、他者に制止的に躍動感をもって影響を与えれば禁止や制止の意味(禁め)になり、権威的上者に対する制止的「いさめ(禁め)」はそれへの物言いの緊張感を躍動感で破る(諫め)。「父の敵を討ち首斬らんと言ひてこそ多くの人をばいさめしか」(『曽我物語』:気持ちを奮い立たせる(勇め))。「縦(も)し詔(みことのり)に違(たが)ひて禁(いさ)むる所を犯すこと有らば、必ず其の族(やから)を罪(つみ)せむ」(『日本書紀』孝徳天皇・大化二年三月二十二日(禁め))。「皇后聞こしめして悲しびたまひて、感(みおもひ)を興(おこ)して(天皇を)止(いさ)めまつりたまふ」(『日本書紀』雄略天皇五年二月(諫め))。
◎「いさまし(勇まし)」
「いさみああし(勇みああし)」。「ああ」は感嘆発声。勇みへの感嘆表明。気持ちが湧き立つように躍動的積極的であること、さらには、恐れず勇敢であることなどを表現する。「いさましく嬉しきいそぎにてあらむだに…」(『讃岐典侍日記』:気持ちが湧き立ち躍動的になりうれしい励みごと)。「あっぱれ武者振りいさましし」(「浄瑠璃」:勇猛そうだ)。
◎「いざなひ(誘ひ)」
「いざねはひ(いざ音這ひ)」。「いざ」は誘う言葉→「いざ」の項(11月24日)。そうした誘いの響きが感じられる情況にすること。何ごとかの動態に気持ちを湧き立たせその動態へ向かわせる。「ますらをの伴(とも)いざなひて……朝猟(あさがり)に…」(万4011)。