(「あ」の段でこの語が抜けていたようですので書きます)

「あふなあふな」は「あふねはあふにな(『合ふ値は合ふ荷』な)」。「ねは(値は)」は「な」になり「に(荷)」は無音化しています。『合ふ値(価値)は合ふ荷』は、価値が合うとは負担が合うこと、価値を手に入れるにはそれに相当する、それに見合う、負い(負担・努力・苦労)を要する、ということ。こうした言い方が、諺(ことわざ)のように、平安時代の庶民の間にあったのでしょう。『伊勢物語』九三の歌では、「『合ふ値(価値)は合ふ荷』な思ひはすべし」(そういう思いはする。まったくそうだ(しかし…))と歌われます。

「あふなあふな思ひはすべしなぞへなく高き卑しき苦しかりけり」(『伊勢物語』九三:『合ふ値(価値)は合ふ荷』な思ひはする。全くそうだ(しかし…)。たとえようなく(それと並ぶこととして並ぶものなどなく、それに相当しそれに見合う何かなどなく)、高きと卑しきとは希望の無いものだ:この『伊勢物語』九三の歌は「身のいやしい」男が「いとになき人」に思いをかけた歌だそうである。身分や貧富であれ美醜であれ、まったく不釣り合いな人に思いをかけたということでしょう)。

この語は「おほなおほな」「おふなおふな」とは異なります。