◎「いきづき(息づき)」(動詞)
「いきづき(息付き)」。「~づき」は「勢いづき」のそれに同じ。何かの動状態になること、何かの動態として活性化すること。「つき(付き)」に関しては「は「つき(付き・着き)」の項。「いきづき(息付き)」は息の状態になること、「いき(息)」の動態が活性化すること。死んだような状態になっていたものが生き返ったようになることも言いますが、苦しい嘆息がつづくことも言います。
「鳰(みほどり:にほどり。「に」と「み」は交替することがあります)の潜(かづ)き息づき…」(『古事記』歌謡43)。「青浪に望みはたえぬ……かくのみやいきづき居らむ かくのみや恋ひつつあらむ」(万1520)。
◎一般にその「いきづき(息づき)」による形容詞と言われる語に「いきづかし」(形容詞シク活用)があります。
これは「いきつきあやし(息つき怪し)」。「つ」は連濁しています。「いきつき(息つき)」の「つき」は「顔つき」のそれのようなものであり、「いきつき (息つき)」は、息の様子。「あやし(怪し)」は、後には、疑わしい、という意味が一般的になりますが、原意は、知が及ばず判断ができないことを表現し、ここでは、自分がなぜそうなってしまうのかわからない不安定な状態にあることを言います。自分の息の状態が、乱れたり、深い吐息となったりする心情であること、自分でもなぜそうなってしまうのかわからない、自分にもどうしようもない、自分で自分がコントロールできない、深い心情にあることを表現するのが「いきつきあやし(息つき怪し)→いきづかし」。「波の上(うへ)ゆ見ゆる兒島(こじま)の雲隠りあないきつかし相(あひ)別れなば」(万1454:これは唐へ行く遣い(遣唐使(ケンタウシ)や入唐使(ニッタウシ)と言う)を見送る歌)。
◎「いきどし」(形容詞シク活用)
「いきどほし(息処欲し)」。「いきど(息処)」は息をする処(ところ)、それがあれば呼吸ができる部分。それが欲しい。もっと呼吸孔をほしがっているような、胸が苦しくなっているような、そんな印象を表現します。そんな様子である「いきどしげ」という表現もあります。
「息どしさうに蛙鳴」(「俳諧」)。「涙をうかめ手を合わせ、いきどしげなる声細く」(「浄瑠璃」)。