「いかにて(如何にて)」。「いかにて」が「いかんて」のような音(オン)を経つつ「いかで」になっています。
その「いかにて」は「いかにとへ(如何にと経)」。どのように経過し、の意。つまり、「いかで」は「いかにとへ」だということです。「いか(如何)」は前に投稿したその項を見てください。たとえば現状が、如何にと経(どのように経過し)、と表現された場合、「いかで(いかに、と、経)さる田舎人の住むあたりに、かかる人落ちあふれけむ」(どういう経過であんな田舎者が住むあたりにあんな人が落ちぶれている)と、どうして、のような意味になります。現状ではなく、想状がそのように表現された場合、「翁、月な見給ひそ(月を見てはなりませんよ)…と言へば(…と言っているから、ではなく、…と言っているが:「ば」は内容次第で順接も逆説も表現します)、いかで月を見ではあらむ(どういう経過で月を見ずにいられるだろう)」と、どうすればそんなことができるのか(それは事実上不可能なのではないか?)と、反語的な表現にもなります。「いかであはれになかるべき」(どうしてあはれでないことがあろう)。
また、願望表現でそれが言われた場合、どうしても、と願望の強さを表現します。「男も女もいかでとく(早く)京へもがなと思ふ心あれば」(「もがな」は何かを希求する状態にあることを表現します)。これも基本は、「如何にと経、京へ」(どのような経過を経ても、どのようにしても、どうしても、京へ)ということです。
つまり「いかで」は、どうして、や、どうしても、のような意味になるということです。「どうして(どうしとへ。どう為(し)と経。どう為(し)、を経過し)」と「いかにとへ(如何にと経)」は意味が似ています。
思考や疑問の「か」がつき疑問性が強意された「いかでか」や、これを「は」で提示し「いかでか」を強調した「いかでかは」や、想的な「も」がついて願望性がより強く表現された「いかでも」といった表現もあります。