自己の完全性を維持して、という意味なのですが、自己の完全性を毀損・破壊するような力・作用が働きつつ自己の完全性を維持して否定が表現される場合、まったく~ない、という否定の強調表現になります。「人のきはめたる大事なればあへて口より外(ほか)に出(い)ださず(口から外へ出さない)」は、人の極めて重大なことなので言ってはならないという自己を維持して決して口外しない、と、そうしない自己が維持されていることが強調されています。「あへて口外せず」は、口外するのが普通だがその期待感に抗し自己を維持して口外しない、という意味にもなります。「万386」にある「いざ児等(こども)あへて(安倍而)漕ぎ出む」の「あへて」は「合へて」であり、力を合わせそろえてでしょう。