「あめいゐ(雨沃居)」。「び」は「むい」のような音(オン)が濁音化・B音化しています。「い(沃)」は『音語源』のその項。古く、注ぐ、や、浴びせる、のような意味の「い(沃)」(上一段活用)という動詞がありました。「あめいゐ(雨沃居)」は雨が降る(沃(い)る)状態に居るということ。何かが自分に雨が降り注いでいるような状態になっています。「Aをあび」と言った場合、「を」は状態を表現します。Aの状態で雨が降り注いでいる(雨が降り注がれている)状態で居る。この動詞は「あみ(浴み)」とも言います。活用は、「び」の一音で表現されている「めいゐ」の動態が活用においても保存され、文法で言う上二段活用になります。否定形は「あばず」ではなく「あびず」。ついでに言えば、上二段活用の動詞がこのような成り立ちをもつことはいわゆる「上代特殊仮名遣い」で上二段活用動詞連用形活用語尾がいわゆる「乙類」表記になることにも影響します。これが四段活用動詞の場合は「び」は「甲類」表記です。「寝おきてあぶる湯は、…」(『枕草子』)。「水を浴びる」。「世間の非難を浴びる」。