「はながち(花勝ち)」。語頭の子音は脱落しました。「がち」は、「~しがち」のそれのように、何かの傾向が強いことを表現します。「~がち」の「~」の部分には名詞や動詞連用形が入ります。「はながち(花勝ち)」は、花である傾向が強いこと。自分自身や他者が花たる自分に陶酔しているような傾向が強い動態になっていること。一人勝手に、独善的に、勝手な思い込みで、よかれと自分に陶酔してしまっている状態で、という意味でも言われます。「あながちなる御言」。「あながちに心ざしを見え(見せ)ありく(歩く)」。「何かあながち僻事(ひがごと)ならむ」は、どうして僻事であろうか、という表現と、どうしてこれが私の、自分を花にした、一人勝手な独善であろうか、という表現が重なっています。「あながちそうとは言えない」は、自分が花となった状態で「そう」とは言えない。花となった状態でないならそうではないかもしれない。「盗人といふ者、あながち外より来りて物を取るばかりにはあらず」。「範頼・義経が申状、あながち御許容あるべからず」(許容は一人勝手に自分に陶酔してるだけ。許容などあるべきことではない)。