「あておひえ(当て負ひ得)」。「てお」が「と」に、「ひえ」が「へ」になっています。「あて」は期待や思惑(→『音語源』「あて(当て)」の項)。相手がこちらの期待や思惑を負うことを得、ということであり、他者を自分の期待の状態にします。誘ったり、促したり、何かをすることを注文したりします。結婚の申し込み(つまり、結婚する気持ちを起こさせ承諾させること)を表現したりもしますが、人をその気にさせてどこかへ誘いだしたり(たとえばAにBの)殺害を促したりすることもあります。「后にせむと思ほしてあとふること既にをはりて…」(結婚しようと申し込み促したのです。「あとふる」は下二段活用動詞「あとへ」(連用形)の連体形)。