「あてついきなし(当てつ行き無し)」の音変化。「あて(当て)」は何かを期待したり何かの思惑を抱いていたすることを表現します→※『音語源』「あて(当て)」の項:「大将の君の御通ひどころ、ここかしことおぼしあつるに…」。「つ」は動態の同動を表現する助動詞→※『音語源』「つ(助動)」の項。「いき(行き)」は進行すること。全体は、期待しつつ進行することがない→何かが期待できるということがない、ということ。特に何かを期待しているわけでもなく、何気なく、といった意味にもなります。「あづきなし」とも言います。「ぢ」か「づ」かは「い」の音が保存強化されるか否かにより決まります。「素戔嗚尊(すさのをのみこと)の爲行(ふるまひ)甚(はなは)だあぢきなし」(将来絶望的、のような意味)。「世の中をあぢきなしと思ひ取りて出家しけり」(こんな世の中、何の期待もできない、将来なんの希望も展望もないと思ったわけです)。「あづきなく何の戯言(たはごと)いまさらに小童言(わらはごと)する老人(おいびと)にして」(万2582:将来的展望もないのに子供のようにこんな恋をしてしまった、ということなのですが、老人がそう言ったのか、若い娘などが返事としてそう言ったのかは不明。たぶん老人が若い娘にこんな歌をおくったのでしょう)。「あぢきなく見奉るわが顔にも移りくるやうに愛敬はにほひ散りて」(これは、何気なく、という意味)。
これらは「あぢけない(味気無い)」とは別の言葉です。「あぢけない(味気無い)」に関しては特に説明はいらないと思います。
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