「あてあれや(当て有れや)」の音変化。「あて(当て)」は期待→※『音語源』「あて(当て)」の項。「や」は疑問→『音語源』「や(助)」の項。全体は、あて(期待)はあるだろうか(いや、ない)、と言っているわけですが、そこに期待は期待としてあるだろうか(いや、ない)→ほかに期待し得ること、もっと期待し得ることがある→もったいない、ということです。「あたら船木を」は、がっかりしたことに船木(船を作れる木)を、の意。「あたら夜」は、多くが期待できる筈なのにそれが現実になっていない夜。これは「…独りかも寝む」と続きますが、「あたら」が「夜」を形容しているような印象も受けます。そして名詞を形容する用い方も現れます。「いみじきあたらつはもの一人失ひつ」。
これによる「あたらし(可惜し)」というシク活用の形容詞も生まれます。
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