「あてつたへ(当て伝へ)」。「てつ」は無音化しました。「あて(当て)」は動態の目標を意味します。AがBにシCを与える、は、Bに対しCを連続的に(AからBへの連続の意)移動させること。「あて(当て)」「つたへ(伝へ)」に関しては『音語源』のそれぞれの項。「…みどり兒の乞ひ泣くごとに取りあたふる物し無ければ鳥穂自物わきばさみ持ち…」(万210)。この元歌は長いものですが、この部分の第五句「鳥穂自物」は、直接に書くのはあまりにひどい表現になるので、鶏(にはとり)の鶏冠(とさか)を「鳥穂」と書いたものであり、それは鶏を意味し、読みは「かけ(鶏)」、すなわち全体は「かけじもの」でよいものでしょう。意味は、まるで鶏(にはとり)のように、ということ。(妻の死により)残された赤ん坊を柿本人麻呂がまるで鶏(にはとり)を運ぶように小脇に抱え、見かねたおばさんにでもそれを指摘されたのでしょう。よく似た「万213」の原文には「男自物」とあるわけですが、これは元歌の意味が分からずそのように意解されたのでしょう。
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