「あたひ(値・価値)」の動詞化。つまり、「あたひ(適ひ)」という動詞がまずあり、その連用形名詞化が「あたひ(値・価値)」になったわけではなく、「あたひ(値・価値)」がまずあり、それが動詞化したということです。「あたひ(値・価値)」があることを表現しますが、ほとんど、というか元来、あたひが無い、ふさわしくない、と否定表現されます。「さ寝床もあたはぬ」(ちょっとした寝床にも不向き)、「するにあたはぬ」(する価値がない)、「あたはぬことなり」(適しない、ふさわしくないことだ)。「あたはず」は、あることに対し能力同価的に作用しない→「できない」の意にもなります。「天人大衆も……測ることあたはず」(測ることができない)。明治以降、まれに肯定表現も現れます。