「あたらね(可惜根)」。「ら」は消音化しました。「あたら(可惜)」は※『音語源』のその項参照。「あたらね(可惜根)」は、期待が満たされなく根を、もったいなく根を、という意味になるのですが、これは『古事記』の歌(5)にある表現で、歌のその部分は「あたね搗(つ)き染(そ)めきが汁(しる)に染(し)め衣(ころも)」をひとまとめにして把握すると分かりやすいです。「あたね搗(つ)き」は、もったいなく根を搗き(茜(あかね)などの根を搗いて布を染める)。「染(そ)めきが汁(しる)」は、染め悔(く)いが汁(しる)。「くい(悔い)」が一音化し「き」になって伝承されています。「染(そ)めきが汁(しる)」とは、染めたことが悔やまれる染め汁。そんな汁に浸して染めた衣が「あたね搗(つ)き染(そ)めきが汁(しる)に染(し)め衣(ころも)」。原歌は非常に長いので記しませんが、この歌はどんな服も気に入らないと贅沢を言っている妻を諫めている歌です。ちなみにそこにある「はたたぎ」は「畑田着」であり、野良着(のらぎ)のこと。「沖つ鳥胸(むな)見るとき」は、憧れの彼方に思いを馳せ夢見るような状態になっていることを表現します。また、これは神代の歌ですが、離縁する妻(女)に、「出ていけ」とは言わず、私はお前のもとを去るぞ、と言っていることも注目されます。
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