「あたるしけなし(当たる蕪無し)」。「る」は無音化し「し」が連濁しています。「しけ」はシク活用形容詞「しけし(蕪し)」(→※『音語源』その項)の語幹の影響も動詞「しけ(無機能け)」(→※『音語源』「ひしけ」の項)の影響も受けているでしょう。これは粗末なつまらないものを表します。「あたるしけなし(当たる蕪無し)」は、それに当たる(該当・相当する)しけは無い→それほどにそれはしけだ、ということ。「それ以上ないほど粗末なつまらないもの」のような意味の形容詞。「かたじけない」に似た語ですが、それは自己卑下で言われるのに対し、「あたじけない」は他を非難したり馬鹿にしたりする用い方をします。「(木戸銭を値切った客に対し)木戸番はあたじけないと首を振り」。
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