「あえずる(落えずる)」。「え」の無音化「る」の脱落。動詞「あえ(落え)」は(その語源は前に触れたのですが)構成が力尽き崩れ落ちていくような動態を表現します。「ずる」は、すべった状態になっていることを表現する擬態。崖(がけ) の崩れた状態になっている地形部分を言います。「あずの上(へ)に駒をつなぎて…」(万3539:この歌に関しては相当後に「いき(息)」の項で触れます)。この語は平安初期の古い辞書にもあるものですが、その意味を知っていてもこの万葉集の歌の理解以外には事実上役に立たないと思います。